2010年10月15日金曜日

小少将からの呼びかけ

 不思議なことがあった。
「長宗我部」を。お読みいただいたという方からの電話が掛かってきた。
聡明そうな女性だった。
家臣団の女性が電話を受けたが、あいにく私は不在でつながらなかった。
その後も、何度か電話をいただいたが、不思議にだめで、お声は聞けなかった。
ようやくつながったのが、4、5日後のこと。

その声は、電話の奥の方で、ゆらめくような感じがした。
背筋を揺すられるような感覚がした。
女性は、「勝瑞城の女城主」といわれた小少将のゆかりの方と名乗られた。

ひょっとして、あの小少将が、「自分はお前の描いたような女ではない」
と抗議してきたのではないか、との錯覚さえ覚えたのだ。
「もっともっと聡明で、さわやかな生き方を望んだのに、
後の世に面白おかしくゆがめられて伝えられている、
その悔しさに、鎮まることが出来ないのです」。
そんなことを、小少将の心が訴えているようにも感じた。

歴史は、その通りには伝わらない。特に、敗れ去ったものの歴史はゆがめられる。
書いているものの必ず陥ると思われる陥穽がある。
それは、この小少尉将の声のように、
真実は、もっともっと生々しく、厳しいものであるということであろう。